継続できない自分を責める必要はあるのか|スピノザ哲学に学ぶ


はじめに

「今日こそ続けよう」と決めたのに、気づけばまた三日坊主。ダイエット、勉強、筋トレ、日記。始めるときはやる気があったのに、数日で止まってしまう。そんな経験は、多くの人にあるはずです。

続けられないと、それだけで自分がだめな人間だと感じてしまいます。「意志が弱いから」「自分には根性がないから」。そんな言葉で、自分を責めた経験がある人も多いのではないでしょうか。

けれど、哲学の視点から見ると、この悩みは少し違う形に見えてきます。17世紀のオランダに、バールーフ・デ・スピノザという哲学者がいました。彼は、人間の心や行動について、当時としては非常に大胆な考え方を残しています。彼の考え方を借りると、「継続できない自分」への見方が変わるかもしれません。

この記事では、継続できない自分を責める必要があるのかについて考えます。


悩みの本質

続けられないという悩みには、共通した思い込みがあります。それは「続けるかどうかは、自分の意志だけで決まる」という考え方です。

たとえば、毎日勉強しようと決めたのに三日で止まったとします。このとき人は、「自分の意志が弱かったから止まった」と考えがちです。しかし実際には、その日の疲れ、仕事の忙しさ、体調、周りの環境など、たくさんの要因が重なって「続かなかった」という結果につながっています。

人間は、自分の行動を「自分ひとりの意志で選んでいる」と感じやすい生き物です。だからこそ、続けられなかったときに、原因をすべて自分の内側、つまり「性格」や「根性」のせいにしてしまいます。

でも、本当にそうでしょうか。同じ人でも、環境や体調が変われば、続けられることもあれば続けられないこともあります。これは、意志の強さだけでは説明できない現象です。


スピノザはどう考えたか

スピノザは、人間も自然の一部であり、他のあらゆるものと同じように、原因と結果のつながりの中で生きていると考えました。石が転がるのも、川が流れるのも、人が何かをするのも、すべて無数の原因が積み重なった結果だという考え方です。

この考え方に立つと、「自由な意志によって何でも選べる」という前提そのものが、少し違って見えてきます。スピノザは、人間が何かを続けられなかったり、感情に流されたりするのは、意志が弱いからではなく、その人を取り巻く原因を、本人がまだ十分に理解していないからだと考えました。

たとえば、やる気が続かないとき、そこには必ず理由があります。目標が漠然としている、疲れがたまっている、環境が整っていない。スピノザ流に言えば、こうした原因に気づかないまま「自分の弱さ」だと決めつけてしまうことが、苦しみを大きくしているのです。

スピノザは、感情そのものを悪いものだとは考えませんでした。むしろ、笑ったり泣いたりする前に、まず何が起きているのかを理解することを大切にしました。継続できなかった自分を責める前に、何が原因だったのかを見つめ直す。これがスピノザの考え方の中心にあります。

彼を特別な聖人のように扱う必要はありません。あくまで、一人の人間として、当時の常識に疑問を投げかけた哲学者として理解すれば十分です。


現代ではどう考えられるか

スピノザの考え方は、現代のさまざまな悩みにも応用できます。

仕事について 残業続きで勉強や副業が続かないとき、「自分は怠け者だ」と感じる人がいます。しかし実際には、体力的な限界や、目標が具体的でないことが原因かもしれません。原因を探ることで、責める気持ちは減っていきます。

SNSについて SNSでは、毎日投稿を続けている人や、継続して結果を出している人が目立ちます。しかし見えているのは、結果だけです。その裏にある環境や条件までは、投稿からは分かりません。他人と比べて自分を責めるのは、情報が足りない状態での判断だと言えます。

人間関係について 「もっと優しく接し続けるべきだった」と、自分を責める人もいます。しかし、疲れているときや余裕がないときに、気持ちが続かないのは自然なことです。原因を理解すれば、次にどう対応すればよいかが見えてきます。

お金について 節約を続けようとして挫折する人も多いです。ストレスがたまると、つい買い物をしてしまう。これも、意志の弱さというより、ストレスという原因への反応だと考えられます。

恋愛について 関係を続けられなかったとき、自分だけを責める人もいます。しかし、二人の間には様々な原因が絡み合っています。一人の努力だけで説明できるものではありません。

どの場面でも共通しているのは、「続けられなかった」という結果の裏に、必ず具体的な原因があるということです。


今日からできること

  1. 止まった瞬間を思い出す 続けられなかった日、何が起きていたかを具体的に振り返ってみましょう。「疲れていた」「時間がなかった」など、事実だけを書き出します。
  2. 原因を環境から探す 自分の性格のせいにする前に、環境や条件に目を向けます。たとえば、勉強道具が片付いていない、通知が多くて集中できないなど。
  3. 目標を小さくする 「毎日1時間」ではなく「毎日5分」など、続けやすい大きさに調整します。小さな成功が積み重なると、続けやすくなります。
  4. 「なぜできない」ではなく「何が原因か」と聞く 自分に問いかける言葉を変えてみましょう。原因を探る質問は、責める言葉よりも次の行動につながります。
  5. 自分への言葉を変える 「意志が弱い」ではなく、「今回はこの原因があった」と言い換えます。言葉が変わると、気持ちの向き方も変わっていきます。

まとめ

続けられないのは、意志が弱いからだけではありません。体調、環境、目標の立て方など、様々な原因が積み重なった結果です。スピノザの考え方を借りれば、感情や行動を責める前に、その裏にある原因を理解することが大切だと分かります。

継続できなかった自分を責めても、次への手がかりは生まれません。原因を見つめることのほうが、次の一歩につながります。

あなたが続けられなかったとき、その裏にはどんな原因があったでしょうか。一度、立ち止まって考えてみませんか。

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